Q&A
信託はなぜ今注目されているのですか?
1 信託制度の経緯
まずはじめに,信託と一言にいっても様々ですが,その中でも今日注目を集めているのは民事信託,特に家族を当事者とした民事信託の分野です。
少し信託という制度の経緯について触れておきますと,もともとは海外を発祥とし,英米を中心に発展してきた制度です。
国内においては明治後期にはじめて導入され,大正時代に信託法,信託業法の制定がされて以降本格的な運用がされてきました。
大正時代以降の国内の信託といえば長きに渡って商事信託が中心でしたが,制定から約80年を経て平成18年に信託法は大きく改正され,信託は特に民事信託の分野において制度としての転機を迎えることになりました。
2 信託法の改正
続いて信託法改正の内容について簡単に紹介させていただきます。
そもそも法改正については法律の内容が現代社会にそぐわなくなったときにされるものであり,それまでしたくてもできなかったことができるようになる,というものであります。
信託法において想定されている現代社会とは,超高齢社会と呼ばれて久しい社会の状況であり,また相続等の遺産の承継が複雑化して十分機能していない,というような状況です。
超高齢社会に対する制度としては既に成年後見,任意後見などの後見制度が存在します。
しかし後見制度については裁判所が必ず関与するなど使いにくさも指摘されている制度です。
また遺産の承継については遺言を残すなどの手段もありますが,遺言として残しておける内容は法律で限定されているなど,必ずしも万能の手段ではありません。
それらの既存の制度で対応しきれない問題を解決しうる手段として,または既存の制度と併用することでより効果を発揮する手段として,そして多機能かつ柔軟な対応が可能な新制度となるべく新信託法は改正されています。
3 信託が今注目されているのは
簡単にまとめますと民事信託が新しい制度であるから注目されています。
そして現代の社会の状況と既存の制度の問題を踏まえ,それを補いうる可能性があることによっても注目されています。
信託とはなんですか? 民事信託と成年後見,任意後見との違いはなんですか?